© 2015 itoh yuka
- 2024.12.26 -
機体に鳥がぶつかったとかで
飛行機が遅れている
疲れているから
早く帰りたいのだけれど
得体の知れない
巨大物体が突如現れて
ぶちあたり粉砕した
鳥の方が余程気の毒だ
私たちは
平気で周りを薙ぎ倒して
涼しい顔をして生きている
優しい手で未来を引っこ抜く
優先搭乗のアナウンスが響き渡り
該当者以外は大人しく待機している
障害者を
子供を
妊婦を
大事にする善良な市民のふりをして
死んだ鳥はもう忘れ去られた
- 2024.12.26 -
末端冷え性の私は
お風呂上がりでもすぐに冷えて
ベッドで眠っている
あなたの足の間に爪先を滑り込ませた
ヒヤッとしたのか
なんだよ、もう
と、眠りながら怒っているあなたに
なんて小さな男だろと、舌打ちした
おいで、あたためてあげる
と、挟み込んで欲しかったのに
今では
寝入り時の繊細な瞬間に
急に冷たいものに侵入されたら怒るだろうと
容易に想像が付くし
甘い期待も嫌がらせもしないけれど
寒いから
あたためてよ
そんな純真な依存
ふてぶてしくも可愛らしい
十年前の冬の話
- 2024.12.26 -
夕日を見たら
あなたに会いたくなった
マフラーを忘れてきたから
首筋に口づけてくれたらいいのに
会いたいときに
会いたいと
言えなくて
せめて
風邪を引かないでね
と、LINEしようかな
- 2024.12.26 -
悲しいことがもう起きないといいな
と、呟いたら
悲しいことも愛おしくなるよ
と、あなたは言う
確かにあなたとの記憶なら
なにからなにまで愛おしくなるかもしれない
でもそれは
触ることのできない肌と
ささやくことのない唇と
望むことの許されない未来が
どうしようもなく
横たわっているからでしょう
届かないほど愛しいなら
やっぱり悲しいかな
- 2024.11.22 -
ないものより
あるものを
数えて
今日はもう眠ろう
© 2015 itoh yuka