伊東友香

ひとりごと

  • - 2024.12.26 -

    サンタさんの贈り物

    筆圧高めの「サンタさん待ってます」
    の期待に応えるべく
    六本木のレゴショップに出向く

    お目当てを見つけ安堵したのも束の間
    行列に並び手に入れた
    黄色いラッピングの巨大なプレゼントを抱え
    途方に暮れる

    息子にバレないよう
    どう持ち帰り隠せばよいのやら

    待ちに待った24日の夜
    クリスマスの絵本を読みながら
    寝落ちしてしまい
    危ないところだった

    夜中にふと目覚めてスパイのような忍足で
    クローゼットから取り出した宝物を足元に置く

    これでミッション完了

    親というのは
    子供のために
    いくらでも頑張れてしまうのだ

    サンタさんはわたしに
    楽しい贈り物をくれた

  • - 2024.12.26 -

    自由な人

    息子に
    ママが1番自由だよ
    と、言われる
    君もけっこう自由だよ
    と、体面を保つため言い返す

    自分のやりたいことしか
    やってこなかった

    バレているのだ

    私が疲れている風でも
    イライラしている風でも
    微塵も我慢していないということが

    将来なにか相談されたら
    誰かのせいにする隙がないくらい
    好きに生きなと言ってあげよう

    自分で背負う分が多くても
    山を登れば
    その分空が近くなるから
    空の近くで雨になって
    海に沈めば
    知らない自由が待っているから

    孤独でも楽しいさ

  • - 2024.12.26 -

    片っぽ

    息子の靴下が片っぽ見つからない
    次の洗濯待ちBOXも
    洗濯機の中の取り忘れも
    探したけれどやっぱりない

    ソファの下も
    ベッドの下も
    ついでにゴミ箱も見たけれど
    微塵もない

    なくなるはずがないものがなくなるのは
    イラつくけれど
    まあ、いいか

    なくなるかもしれない
    片っぽが
    なくなるよりは
    ずっとまし

  • - 2024.12.26 -

    伝導率

    亡くなった友人が
    近頃よく夢に出てくる

    思い出すことのないほど
    疎遠になっていたのに

    存在が濃くなって登場する

    肩までのしっかりした黒髪と
    濃い眉毛は健在で
    なによりいつも笑って
    私と誰かの傍で陽気にしてる

    学生時代と同じ他愛のない話は
    あの頃と同様に
    翌朝には忘れてる

    だけどしっかりと温度は残ってる
    平熱高めの彼女らしい
    伝導率が良さげなところに
    夢の中でも助けられてる

  • - 2024.12.26 -

    わたしも同じのを

    病み上がりの友人の顔に
    微かな疲れが見えた気がして
    急に不安になった

    同世代のタレントの訃報を
    聞いたせいもあるだろう

    好きな人が極端に少ない私は
    熱心にその人の
    健康と笑顔を願うけれど

    それさえも無情に奪われて行くのが
    世の常だと
    知りながら知らないふりをして生きてる

    辛いことは
    先送りに
    見たくないものには
    栓をして

    今、笑おう
    楽しもう

    結局、人生なんて
    その繰り返しでしか
    ないのだから

    忘れた頃に
    栓を開けたワインは
    熟成してまろやかになっているかもしれない

    目の前で
    もう一杯飲もうかな
    と、溢れる笑顔が言う

    その幸せを噛み締めて
    わたしも同じのを!

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Photo ノザワヒロミチ