伊東友香

ひとりごと

  • - 2021.09.15 -

    恋に似たもの

    ないものねだりでは
    ないのです

    本当になんにもないのだから

    私を高揚させるものが
    躍らせるものが
    瞳を潤ませて懇願するものが
    抑えきれない欲望が
    静かな湖にすうっと沈んでしまって
    なんにもないのです

    だから、欲しい
    ただただ仲間を呼ぶ
    クジラの歌に
    惹きよせられる
    恋に似たもの

  • - 2021.09.15 -

    天国へのおみやげ

    もし天国があるとして
    あの人へのおみやげはなにがいいだろう

    この世になにも残せなくても
    楽しく生きたと言えば
    安心するだろうか

    この世になにも残せなくても
    愛し抜いたと言えば
    誇りに思うだろうか

    この世になにも残せないまま
    ひとりで生きたと言えば
    可哀そうにと泣くだろうか
    そんなもんだと
    笑うだろうか

    束の間、一緒に生きた
    あの人との永遠を鼻歌に
    手ぶらで行けばいいか

  • - 2021.09.09 -

    懺悔ではなく

    私が子供のころ
    悪いことばかりしていたのは
    心配ばかりかけていたのは
    なぜだろう

    反抗とも違ったし
    注目されたかったのでもない
    可哀そうに思われるのは嫌で
    向こう見ずでいるのは
    強さに似てる気はしてた

    死ぬのは本当にこわくなくて
    裸になってもいいと思ってた

    余計なことをたくさんしたけれど
    それはただそれだけのこと
    する必要はなかったけれど
    しないでいられたかといえば
    やっぱり無理

    過去を含めて私だとか
    言う気はさらさらないけれど
    肯定も否定もせずに忘れても
    いいんじゃないのか?

    一生、悔やんで生きても
    喜ぶ相手はもういないから

    懺悔のかわりに
    今は
    幸せを試してみたい

  • - 2021.09.09 -

    いい人 

    いい人でも
    わるいことはする

    わるい人でも
    いいことはする

    わたしはいい人じゃないけれど
    いいことをする
    人になりたいと思う

    わるいことをしたときは
    許してくれと思う

  • - 2021.09.09 -

    いいこと

    私と同じ場所に
    皺のあるあの人が
    元気なうちに

    いいことを
    喜ぶことを
    なにか一つくらい
    できればいいけど

Photo ノザワヒロミチ