© 2015 itoh yuka
- 2021.05.25 -
幸せだと括ってしまえば
傲慢
不幸だと括ってしまえば
諦め
スーパーで売られたネギみたいに
束ねられるのは
ごめんだよ
古い観念なら
輪ゴムと一緒に
キッチンバサミで
チョキンだ
ばらばらになったネギ一本に
わたしの自由が隠れてる
- 2021.05.25 -
感謝などしない
みんな自分のために生きている
感謝などいらない
わたしはわたしのしたいようにしている
窓の外の笑顔にぞっとする
遠くから小鳥の声が聞こえる
薄暗い部屋
ひとりだという
底知れぬ力強さに後押しされて
もう一日と
生きてしまう
- 2021.05.25 -
この非力な両手では難しいという理由で
見ないふりをしているうちに
失われたものたちが
私の喉元までせりあがってきて
もうすぐ息ができなくなる
死に際、息を吸うのを見た
棒のような足も
固くなった肌も
見開いた目も
どうすることも出来なかったというのは
何もしなかった言い訳
知らず知らず誰かが誰かを殺している
屍の上に胡坐をかいて
笑い転げる気分じゃない
この非力な両手で
せめて何を守りたかったんだろう
気まぐれな快楽に流されながら
何を守ろうとするんだろう
- 2021.05.17 -
綺麗なものを見たくて
アジサイを買ってきた
庭に捨て置かれた壺に入れてみたら
よく似合う
雨を受けて笑っているように見える
小さな花弁たち
昨晩読んだ絵本では「森がお家なの」と木が言っていた
アジサイを見た子供が「おんなじだ」と言う
植物みたいに生きたいなと思う
植物みたいに生きてほしいと願う
それがなかなかに難しいと知っていて
最近、プランターがどんどん増えていく
ジャングルみたいな庭で
息子と潜んでいよう
雨があがれば公園に行きたいと
彼は言うけど
- 2021.05.17 -
自分は自分
そんな根本が
見失われがち
ベランダで育ちはじめた
トマトの方がよほど
凛々しい
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