伊東友香

ひとりごと

  • - 2024.05.07 -

    野焼き

    火を探していた
    私の中に
    いつか今に没頭し転げ落ちた崖で擦れた
    火を探していた

    火を探していた
    あなたの中に
    いつか首を締めた鬼気迫る快楽の幻夢に
    火を探していた

    火が火を燃やし
    火が火を消して

    荒れ野の割れ目に
    小さく生まれた芽をみつけた

  • - 2024.05.07 -

    ジェンダーギャップ

    「家を安心して任せておけない」
    って、男の台詞にギョッとする
    さかなくんと一緒に
    ギョギョギョと言いたい

    海が魚の住処のように
    家は家族の住処だろうに

    海に帰るなら
    海を綺麗に
    家に帰るなら
    家を居心地良く
    するのは利用者の努めでしょう

    男は外で
    女は家で
    みたいな前時代的な価値観に
    動悸がする

    縮まるどころかさらに深まる溝に
    塩やら泥やらを埋め込んで
    傷口がドクドク痛い

  • - 2024.04.16 -

    うつらうつら

    目が覚めた瞬間
    あなたを思う

    部屋の机に置きっぱなしのグラスとか
    枯れそうで枯れない観葉植物とか
    無味乾燥なインテリアとか
    カーテンの隙間からの光に目を細める
    あなたを思い浮かべる

    今日もただ幸せでいてと祈りながら
    会いたいというより遠くて

    もう一度
    うつらうつらしてしまう

  • - 2024.04.16 -

    夫婦

    あんなになんでも話していたのに
    こんなになんにも話さなくなるなんて

    空気というより
    虚無かしら

  • - 2024.04.16 -

    誰に囚われるでもなく
    何に流されるでもなく

    私はわたしとしていればいいのだと
    青空の下で思った

    誰と比べるでもなく
    何と戦うでもなく

    私はわたしとしていればいいのだと
    太陽の下で思った

    生まれてただ死ぬのだから
    食べてただ眠るのだから

    指令を出さずとも
    勝手に前へと出る
    右足と左足に
    感謝と誇りを込めて

    風が吹かずとも
    勝手になびく
    髪と涙を
    ひるがえして

    歩幅を広げれば
    美しい流線が浮かぶ
    ふくらはぎを
    見せつけて

    土の上で
    朝に挑んだ

Photo ノザワヒロミチ