伊東友香

ひとりごと

  • - 2022.11.14 -

    更地になった公園

    新しいものを作り続けるのは
    いいことだろうか
    作っては壊してで、無駄じゃないのか

    更地になった美竹公園は
    もうみんなに忘れ去られた

    追い出された浮浪者のほかにも
    追い出されたものがある

    浮遊した違和感を見ぬふりで
    颯爽と歩く人たち
    行きたいところがあるようにも見えない
    こぎれいな人たち

    今年の春
    黄色い蝶々が浮浪者の肩で休んでた
    浮浪者が足を伸ばしてた
    あのベンチはもうない

  • - 2022.10.19 -

    暗い潔さ

    明日のことが分からないのに
    10年後がわかるはずもなく

    今日したいこともないのに
    1年後にしたいことがあるとも思えない

    愛されているのかも
    愛しているのかも

    名前で括られる関係に確かなものなどなく

    かといって、心に頼れば
    もっと不安定

    揺らいでいることに
    慣れてしまえば
    それさえも、退屈

    退屈だけれど、なんだろう

    心地よい疲れの中で
    怠惰な諦めの中で

    湖に浮かぶオフィーリアのように
    暗い潔さがあるのは

  • - 2022.10.19 -

    かくれんぼ

    せっかくかくれんぼしてたのに
    探してもらえずに
    日が暮れて
    もう夜じゃん

    ひとりばっちで
    どこへ帰ろう

  • - 2022.10.19 -

    慣れた

    コロナがはじまった
    それにも慣れた
    戦争がはじまった
    それにも慣れた
    物価が上がった
    それにも慣れた
    給与が下がった
    それにも慣れた
    親が死んだ
    それにも慣れた
    子供が生まれた
    それにも慣れた
    年を取った
    それにも慣れた

    慣れて、慣れて、
    いいのは
    傷つかないですむこと
    慣れて、慣れて、
    わるいのは
    考えなくなること

    人は無意識に慣れて行くから
    傷付いてるくらいが
    ちょうどいい

  • - 2022.09.16 -

    ずっと見ていよう

    何万年、何億年前の輝きが
    わたしをなぐさめるから

Photo ノザワヒロミチ