© 2015 itoh yuka
- 2023.07.10 -
なにかがなくなれば
なにかが入ってくれると
自分をなぐさめる
隙間は隙間のまま続くこともあるけど
スースーと胸の辺りが寒いこともあるけど
風通しはいいだろう
見通しもいいだろう
向こうから未来の使者が手を振れば
迎えに行こう
- 2023.07.10 -
昨夜、兄の夢を見た
母に寄り添われて顔を真っ赤にして
お酒を飲みながら下手な冗談を言って幸せそうだった
兄は死ぬ瞬間まで母を愛した
死んでからも痕跡を示し続けた
愛されている実感がないから求め続けた
存在を肯定して欲しくてあらゆる策を講じた
夢の中で兄が幸せそうでよかった
たとえそれが私の夢でも
- 2023.07.10 -
雫を抱きしめるように
君を抱いた
消える前に飲み干そうと必死だった
どうしようと
君は
あとかたもなく消えた
この世のものじゃなかった
少なくとも僕の世界では
なかった
- 2023.07.10 -
「大好きだよ」
と、言うと
「うれしすぎてないちゃうよ」
と、言って
本当に泣きだす息子
「こどものときはずっといっしょにいるよ」
泣きながらも達観したことをいう
「こんなときはだっこするんだよ」
おっしゃるとおり抱っこする
母は、毎日、覚悟を決めているのだよ
やがて旅立つ君を潔く見送れるよう
愛の収集に勤しんでいるんだ
一緒にいてくれてありがとう
人生の今だけの幸せをかみしめて
力強くまるごとひかりって感じの
君が眩しくて
こちらこそ
嬉し過ぎて、泣いちゃうよ
- 2023.07.10 -
ママが僕より歳を取っているのが嫌だ
と、泣く息子
歳の差は縮まらないのだよ
年下彼氏じゃあるまいし
嘆かないでおくれ
いつか
年老いた私は
小さくなったとまた泣かれるのだろうか
皺くちゃの手を引いて散歩に連れ出されるのだろうか
生まれてから死ぬまでが
ブラックホールのように
思い出せなくなっても
ただ、そこにちょこっと奇跡が瞬く
君という光
© 2015 itoh yuka