伊東友香

日々のこと

  • - 2016.09.26 -

    口づけからはじめよう

    お腹の中に命が宿って
    9ヵ月が経った。
    最初のころは新緑の緑のように
    水を浴びるように飲んでいた。
    今は秋のはじまりの日差しのように
    落ち着いてきたかもしれない。
    大きくなったお腹をふわっとあたためながら
    日々を過ごしている。

    何万年も続いてきたこと。
    どの生き物も営んでいること。
    とはいえ、人間の雌として現代社会の中で
    本能が覚醒するタイミングをはかりかねながら
    生きてきてしまった私が子を産み落とすミッションは
    なかなかに大変である。
    大変だけれど、もちろん嬉しい。
    はじめてのことをするのはドキドキする。
    そして、そのあと数十年と続くだろう子の親という立場も
    大変だろうとは思うけれど、心から楽しみだ。

    私は女である前に人間で、人間である前に動物。
    けれど、それをすべて超越して
    今は妊婦であり、母である。
    海みたいな、宇宙みたいなもん。
    お腹の中で命を育てる、地球。

    あと少しで顔を合わせる生命体に
    どんな顔で挨拶を交わそうか。
    どうぞ、よろしく。
    産まれてきてくれてありがとう!
    と口づけからはじめよう。

Photo ノザワヒロミチ