© 2015 itoh yuka
- 2023.08.07 -
手は離さず
怒りで早足になる母を
小走りで追いかけながら
「お父さんのこと好き」
と、火に油を注ぐ私
母はなんと答えたんだったか
「嫌い」
だったか
「わからない」
だったか
「好き」
では、なかったのは覚えている
母は私を
道連れのように人質のように
同志のように重荷のように
歩いていた
母に行く場所なんてないと
知っていたからこわくなかった
夜の道はただまっすぐ続いていて
遠くにいつものネオンが見えた
コンビニでなんか買って帰ろう
愛していても
好きじゃない
そんな家でも
© 2015 itoh yuka