- 2021.05.25 -
この非力な両手では難しいという理由で 見ないふりをしているうちに 失われたものたちが 私の喉元までせりあがってきて もうすぐ息ができなくなる 死に際、息を吸うのを見た 棒のような足も 固くなった肌も 見開いた目も どうすることも出来なかったというのは 何もしなかった言い訳 知らず知らず誰かが誰かを殺している 屍の上に胡坐をかいて 笑い転げる気分じゃない この非力な両手で せめて何を守りたかったんだろう 気まぐれな快楽に流されながら 何を守ろうとするんだろう
© 2015 itoh yuka