伊東友香

ひとりごと

  • - 2023.08.07 -

    空だけが知っている

    子供を学童まで送っての
    かえりみち
    あやしいと訝しんでいた空から
    ざまあみろとでも言うように
    ザーっと雨が降り出す

    目の前の歩道橋の下のわずかなスペースに
    自転車を突っ込んで雨宿り
    駒沢通りを挟んで向こう側にも雨宿りしている男性がいる

    それぞれがそれぞれの今日をはじめようとしてて
    雨に打たれたり牛乳をこぼしたり妻に怒られりしている
    スカートが濡れたりまた乾いたり面倒になったりしている

    雨が小降りになり
    向こうの男性より一足先に
    自転車をこぎはじめる
    小降りだった雨はすぐに止み
    信号を過ぎた頃には
    晴れ間から猛烈な日差しだ

    激動の日をしなりと生き抜くのだ
    所詮気まぐれな空
    あくせくしてもはじまらない
    空だけが知っている

Photo ノザワヒロミチ