© 2015 itoh yuka

- 2026.02.13 -
HCUの待ち合い室で
腹膜炎と全身への感染症で昨晩緊急入院し
今しがた亡くなられたと
医師から報告を受ける遺族と鉢合わす
呆然とした様子の高齢男性
20代に見えるスーツ姿の女性が
両手を前で祈るように組みながら
泣いている
爪が皮膚に食い込んでないか
血の方が悔いよりはましか
なんとか命を繋ぎ止めた母との面会を待ちながら
もらい泣きをしている場合でもないのに
涙が滲み出る
電気のONOFのスイッチみたいに
突然パチンと切れる命がある
なんとか灯り続ける命がある
それは医療がどうとか
発見が早いとか遅いとか
祈りとか愛とか神でさえ
及ばない
手の届かない諸行なのだ
面会の時間が来て病室へ向かう
驚異の精神力で母は笑顔を見せるほどに
回復した
風邪を引かないようにね
と、私に言う
自転車、気をつけるのよ
と、心配する
それどころではない母の
いつもの母らしい言葉に
苦笑い
ハンドクリームを塗りながら
マッサージをしているふりで
手をつなぐ
デパートへ連れ立って歩く
幼き頃のように
今はしっかりと
手をつなぐ
その温度を
ぬくもりを
約束を
強さを
命を
つなぐ
© 2015 itoh yuka