伊東友香

歩き出すその前の、わたし

自分の経験したことしか
わたしにはわからないから
前に綴ったものを
少しずつ掲載していきます

大切な人との別れを経験したことのある
すべての人に捧げます



ありがとう

猫が通っても
花が咲いても
風が吹いても
夕日が沈んでも

ぜんぶぜんぶ
あなたと思う



日光浴

木漏れ日を
あなただと思って
なるべくね、日光浴



いい人

いい人でいたい
そう思わなきゃ

人間じゃなくなる



怒り

怒りが悲しみを超えると
目が乾く



悲しみ

自分の悲しみだけを
見つめないようにしなきゃね

こんなときこそ
人の悲しみを

誰かを癒すことで
自分が癒されたら
いいじゃない



なかった

明日があるさ
なんて言うけど

明日なんてなかった





サンドウィッチを
パクパク食べる

人間の本能って何だろう・・



順応

苦しみが減ったんじゃなく
苦しみに慣れたんだな



ひかり

ぬくもりを探してる
あなたはいない

ぬくもりを求めてる
あなたはいない

寒くて凍えても死ねずに
また、泣いた

ぬくもりが欲しくて

氷った涙
きれいな雫

手のひらを固く締めれば
砕けた光が肌に刺さる

あつい
小さな痛み

ぬくもりをみつけた



糸電話

ポストの中に
あなた宛ての携帯の請求書

もう誰ともつながることのない通話

ドコモさん
天国への糸電話をお願いします





あなたの名前を呼んだら

呑んでいた焼酎の氷が綺麗に鳴った

返事してくれたの?

そうなの?



どうして

いつもあなたと一緒に行った
コンビニに
いつもの定員さんがいた

この人はいつも通りで
どうしてあなたは
死んじゃったんだろう

どうしてなんだろう





水をかえない花瓶の
花が綺麗に咲いてる

いらっとする

この世の生きてるものすべてに



いない

テレビを見て笑う

あなたが隣で笑っていないことに気づいて

今度は泣く



キス

行ってらっしゃいのキス
ただいまのキス
おやすみのキス

その瞬間が思い出せない

毎日のこと過ぎて
思い出せないんだ



私に包まれて

最後の瞬間
あなたはなにを見た?
私のこと思い浮かべた?

それが私の笑顔だったらいいな
怒り顔でもいいけど

あなたの大好きな私に包まれて
瞼を閉じたならいいなと願うよ



最後の恋人

わたし
あなたの最後の恋人だったのね



あなたのぶんまで

美味しいものは
二倍食べよう
あなたのぶんまで
嬉しいときは
二倍笑おう
あなたのぶんまで

そして
悲しみは寂しさは
朝日に溶かそう

あなたの微笑みに
そっと手を伸ばして

忘れよう

Photo ノザワヒロミチ